「Oxygen」は、木材を積極的に使用することが、
私達の生きていく上で必要な営みのひとつだと捉え、
多摩産材を使用した魅力的なプロダクトを開発することで、
その一端を担おうと考えています。
Interview
――Oxygen発足のきっかけは何だったのですか?
林業が衰退してきて、放置された山が増えているというのは、全国的な問題のようです。行政も、手付かずの森林をどうにか有効活用していく仕組みを探っていて、民間と共に何かいいアイデアは無いかということで、多摩地域でも色々な取組みをしています。
ただ、正直なところ、なぜ問題が起きていて、じゃあどうすれば良いのか、明確な結論は出ていないと思うんです。おそらく一番の原因は、外材が入ってきて日本の材木が切られなくなったということだと思うのですが・・・。
手間を掛け、育て、山から切り出したとしても、たいして高く売れない。それが現状のようです。仕組み自体を改革していかなければならないのですが、山主、林業事業者、製材所、工務店、加工業等、木に携わっている人びとの問題意識や課題にはそれぞれ違いが有り、 それらを一括りにして、「こうしましょう」とは中々できない。
我々にできるのはプロダクトを作ることなので、多摩産材を使用した魅力的な木工製品を開発するという側面から、森や林業の手助けをしたいと考えたのがきっかけです。
――日常的に木に関わる人でなければ、森や林業の問題を意識することは難しいですよね。知ってもらうための手がかりは何処にありますか?
ものづくりのストーリーを謳う企業やブランドが溢れる中で、言葉で伝えるだけでは、「またこの感じか」とか「これってほんと?」とか、違和感を感じてしまう人が少なからずいると思います。でも、本当はもっと自分事として捉えてもらえる何かにつなげたい。
例えば、多摩産材を使った家に住む人にとっては、「地元で育った木がこの柱に使われている」と伝えてあげることが_スーパーで野菜に産地の農家が載っているような_親近感、安心感につながる。
集成されたハリボテの柱や、プリントの木肌などのフェイクなものが横行している中で、「多摩産材で建物を創りましょう」という人たちは、ある程度コストが掛かっても無垢の材料にこだわる姿勢があると思います。
でも、彼らが無垢の木を選ぶ理由は、「林業や環境を考えて」ということばかりじゃないはず。実際に、山へお客さんを連れて行き、「この木があなたの家の柱になります」というツアーなどもあるそうですが、どこか実体験の中で、無垢の木に触れたり、匂いを嗅いだりしたことがあって、木を身近に感じているからなのかもしれません。森に興味を持ってもらう最初の手がかりは、こうして言葉で伝えられる部分よりも、体験や実感にあるんだと思います。
――今回のプロダクトを制作するにあたり、多摩産材にはポテンシャルを感じましたか?
やはり檜ですから、温かみのある木肌や手触り、香りは大きな魅力なんです。その他にも、特徴的な赤みだったり、素材の軽さであったり、広葉樹では使われない節など、活かしてあげられる部分はあると思います。また積極的に他の素材とも組合せてみると、檜の木肌との相性はすごく良かったです。
一方でそれらの特徴は、柔らかさや比重の少ない弱い素材とも受けとられるのですが、今回実施した椅子の強度検査では「かなり丈夫に作られている」と、予想外の評価をいただきました。素材の特徴を活かしながら、機能性も高めていく新たな可能性を感じました。
――最後に、今後の活動を通してどのようなことを目指していきたいですか?
このプロジェクトでずっと頭にあるのは、「身近な木で身近なモノを作る」ということです。もともと杉や檜は全国的になじみのある木だと思います。ブランド杉や檜ばかりが周知されていますが、東京の多摩地域にもちゃんと生息していて、それを暮らしのなかにどう取り入れていくのか。山のこと、素材のこと、そしてプロダクトとして。
世間的には量販店に売っているものの方が身近かもしれないけど、「家具を買おう」となったときに多摩産材の家具というのも選択肢のひとつになってほしい。今、住宅はそうなってきているのだから。そうして身近に置いて、使って、それで愛着が湧いて、背景を知りたくなる。最終的にはそこに繋がればいいと思います。
「これ、昔から使ってるけど何?」と、意識しないうちに自然と生活の中に入っているような、そういうものになれば良いですね。